結局のところ銀色の小さな棒にすべてを移して、誰の手も届かない暗い場所に隠し続けることだけが唯一の正解なんです。
ぼくは毎晩のようにその冷たい金属の感触を確かめています。
あなたは画面の中で赤や緑の数字がチカチカと点滅するのを眺めて、自分の大切なお金が増えたり減ったりするたびに、喉の奥がヒュッと鳴るような感覚を味わっているのでしょうね。
夜中に何度も目が覚めて、枕元のスマホを手に取り、光る画面に映る数字を見ては安堵したり、あるいは胃のあたりが鉛のように重くなるのを感じたりしているはずです。
それはとても疲れることだし、人間としての機能を少しずつ壊していく行為です。
未来の話をしましょうか。
これから先、ぼくたちが普段使っている紙のお金は、ゆっくりと、でも確実にただの紙切れに近づいていきます。スーパーで買うリンゴの値段が上がり、ガソリンの値段が上がり、銀行に預けてある数字の価値が薄まっていくのを、あなたは指をくわえて見ていることになるんです。
それがぼくに見えている未来です。
だからこそ、ぼくはあの銀色の棒を信じているんです。
あれはただのUSBメモリのような形をしていますが、中身はまったく違います。
インターネットという広大な海から完全に切り離された、冷たくて静かな金庫なんです。
ぼくは給料が入るたびに、生活に必要な最低限のお金を残して、あとはすべてデジタルのコインに変えています。そして、それをすぐにその銀色の棒の中に閉じ込めるんです。
パソコンに繋いで、プラスチックの硬いボタンをカチカチと押す感触が好きです。画面に表示される二十四個の英単語を、ボールペンで紙に書き写すときの音も好きです。紙の繊維にインクが染み込んでいくのをじっと見つめていると、自分だけが世界の秘密を握っているような気分になります。
その紙は、誰にも見つからないように、燃えない鉄の箱に入れてあります。あなたは「いつ売ればいいのか」とか「どのコインが上がるのか」と考えているかもしれませんが、それは間違いです。売ってはいけないんです。売って紙のお金に戻した瞬間に、あなたの負けが決まるからです。
ぼくは決して売りません。
十年後か二十年後、周りの人たちが紙のお金の価値がなくなったと騒ぎ始め、パン一つ買うのに何枚ものお札が必要になったときに、初めてその銀色の棒を取り出すつもりです。その時、その棒の中にある暗号だけが、本当の意味での価値を持っているはずです。ぼくはそれを想像すると、背中のあたりがゾクゾクします。汗ばんだ手でスマホを握りしめ、一喜一憂するのはもう終わりにしましょう。あなたが持っているそのコインを、今すぐインターネットの繋がっていない冷たい箱に移して、二度と取り出せないように鍵をかけてしまうんです。
それが、この狂った世界で正気を保つための、たった一つの儀式なんですよ。