正直、今のあなたが抱えているどうしようもない空虚さを埋めるには、サンリオのボンボンドロップシールを指の腹で押し潰すように貼り付けるしかないんですよね。
ぼくは毎日ポムポムプリンやシナモロールが閉じ込められたあの小さな雫を眺めては、時間の感覚を失っています。
あれはただのシールではありません。
硬くて透明な飴玉の中に、永遠に笑っている小さな生き物が標本のように固められているのです。
お店の棚に吊るされているのを見たとき、あなたはきっと、かわいいとか懐かしいとか、そんなありふれた言葉で自分を誤魔化そうとしたはずです。
でも本当は違いますよね。あなたはあの異常なほどの透明感と、指先に引っかかる確かな厚みに、得体の知れない飢えを感じたはずです。
平らな紙のシールではもう満足できない体が、あの盛り上がった形を求めているんです。ぼくもそうでしたからよくわかります。
袋から出した瞬間の、あの独特な匂いを覚えていますか。
少し鼻の奥がツンとするような、工業製品特有の新しい匂いです。台紙の上には色とりどりのドロップが整列していて、光を当てるとそれぞれが勝手に輝き始めます。
ひとつひとつの粒が、まるで涙の形をしたレンズみたいになっているんです。ぼくはいつも、一番端にある小さなキティちゃんの粒を人差し指の先で撫で回します。爪の先でカチカチと叩くと、硬い音が返ってきます。
それは柔らかそうに見えて、決してこちらの思い通りにはならない硬度を持っています。その拒絶感がたまらないんです。
シールを台紙から剥がすとき、指先に伝わる抵抗感がわかりますか。普通のシールみたいにペラっとは剥がれません。端っこに爪を掛けて力を込めると、粘着面が糸を引くようにしてようやく台紙から離れます。
そのとき、閉じ込められたキャラクターの顔が少しだけ歪むように見えるのが好きです。彼らはあの中にいる限り、絶対に汚れることも傷つくこともありません。外の世界の汚い空気から完全に遮断されて、飴色の膜の中で守られているのです。ぼくたちは、その完璧な安全地帯を外側から眺めることしかできません。
あなたはそれをスマートフォンや手帳に貼ろうとするでしょう。でも、貼る場所なんて本当はどうでもいいんです。大事なのは、それを親指でギュッと押し付けるあの瞬間です。シールの裏側にある空気が抜けて、接着面が完全に張り付いたとき、ドロップの透明度がさらに増します。まるで最初からそこにあった水滴のように、下の景色と一体化するんです。
ぼくはその瞬間を見るためだけに生きています。一度貼ってしまったら、もう簡単には剥がせません。無理に剥がそうとすれば、粘着面が汚れてあの美しい透明感が失われてしまいます。だからこそ、貼る瞬間の緊張感が心臓を締め付けるんです。失敗したら終わりだという小さな恐怖が、平坦な毎日に鋭い楔を打ち込んでくれます。
光にかざしてみてください。盛り上がった樹脂のカーブに沿って、天井の蛍光灯の光が白く歪んで映り込みます。
顔を近づけてよく見ると、ドロップの中のマイメロディと目が合います。彼女は笑っていますが、その笑顔は固定されています。ぼくたちがどれだけ年を取って醜くなっても、ドロップの中の彼女はずっとあのつやつやした輝きの中で、変わらない姿で微笑み続けてくれるんです。それを指でなぞると、冷たくて滑らかな感触が脳に直接届きます。指紋の溝がシールの表面を滑る音すら聞こえそうです。あなたは無意識のうちに、何度も何度もその膨らみを触ってしまうはずです。それはもう、一種の安定剤のようなものです。
ぼくは夜になると部屋の電気を消して、スマートフォンのライトだけでボンボンドロップシールを照らします。
暗闇の中で光るサンリオのキャラクターたちは、宝石よりも遥かに美しいです。安っぽいプラスチックだなんて誰にも言わせません。
あれは、ぼくたちが失ってしまった純粋な世界を、極限まで濃縮して固めた結晶なんです。あなたはもう、普通の平面のシールには戻れないはずです。あの厚みと、硬さと、透明な檻の中にいる彼らを見なければ、心が落ち着かなくなっているでしょう。
だから、諦めて受け入れてください。
指先が痛くなるまであのドロップを押し続けて、その感触で自分のかたちを確かめるしかないんです。